病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「第118回歯科医師国家試験の結果を考える」

1.はじめに
第118回歯科医師国試の合格発表が3月14日(金)に行われた。
出願者数3,431人、受験者数3,039人、合格者数2,136人であった。合格率は70.3%で、12年ぶりに70%を超えた。
2.受験者数が減少し、合格者数が回復してきた
合格率は回復したが、合格率の上昇は、受験者数が減少し合格者数が回復してきた結果とみられる。
図表は受験者数と合格者数の推移グラフである。合格者数は2022年を底に増加してきたが、受験者数は2021年から年々減少している。受験者数の減少は大きな問題である。この状態で合格者数を増やすことはレベル低下に直結する危険があるからである。
対策としては、歯科医師になりたいと考える優秀な学生を増やし、受験者数を増やして、試験のレベルを維持しながら合格率を高めていくのが正攻法だろう。
受験者数を絞り込んだ結果、今年の国試では私立大学歯学部の新卒合格率が80%を超えた。しかし、 入学者の50%しか歯科医師になれていない私立大学歯学部があるという現実を解消する必要がある。留年を繰り返して退学する学生も多いが、彼らは「大学中退」であり良い条件での就職が難しい。卒業しても国試浪人を繰り返すうちに年齢が高くなり、あきらめて就職しようにもよい就職先を探すのは難しい。
私はこの対策として、私立大学歯科部に4年制の「保険衛生技工学部」をつくれないかと提案している。CBTに受からなかったり、複数回留年したりした学生を転部させて、在学中に歯科衛生士と歯科技工士の受験資格を与え、卒業生に「学士」号を与えるのである。これは決して不可能ではないと思う。
例えば、金沢医療技術専門学校と、大分医療技術専門学校の2校は3年間で歯科衛生士と歯科技工士の資格を取得できる。歯科技工士国家試験が二年次の2月に、歯科衛生士国家試験が三年次の3月にあるため、両方を受験できるカリキュラムとしているのだ。
ダブルライセンスを持つ保険衛生技工学部の卒業生は歯科界で重宝する人材になるだろう。保健所や市役所に就職して公務員になる道や、歯科関連産業や製薬会社や医療機関に大卒として就職し活躍する道が開ける。もちろん、歯科医院に就職して歯科技工士や歯科衛生士として活躍することもできる。
また、4年制の「歯科情報工学部」をつくることも考えられる。歯科技工士の資格を与えれば、AIを使った診断補助技術や新たな技工材料の開発などのイノベーションに対応できる高度な専門人材の養成につながると考えられるのではないだろうか。
私立大学歯学部の多くが定員割れに苦しんでいるが、このようなセーフティネットがあれば、受験生を集めやすくなるだろう。医療系の理系学部は人気があるからだ。現実に、4年制の歯科衛生学部は受験倍率があがり、管理栄養士を養成する栄養管理学科は毎年1万人以上の学生を集めている。最初から「保険衛生技工学部」や「歯科情報工学部」をめざす学生も多いのではないかと考えられる。
歯科医師国家試験の合格発表がある度に、留年・休学中の学生や、国試不合格となった学生達に、歯科界で活躍できる未来を与えることができないかと思う。
