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診療(介護)報酬
2025年10月23日

医療格差はやってくるのか

執筆した医業経営コンサルタント

阿部 勇司

阿部 勇司

オフィス謝府礼
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来年の診療報酬改定に向けての話題が盛り上がってきています。
ところで、社会保障費で成り立つ診療報酬は、ときの経済状況とも無縁ではありません。日本の経済が上向き、私たちの暮らしが豊かであれば、診療報酬は手厚くなることが期待できます。

しかし経済成長率を測る指標の一つであるGDP(実質)は1988年の6.66%をピークに下降し、ここ最近は2022年(0.94%)、2023年(1.49%)、2024年(0.08%)など低迷が続いています。

私たちは保険証があれば、全国どこの医療機関でも受診をすることができます。しかし最近では紹介状なし受診に対する選定療養費の徴収など、実質的なフリーアクセスは徐々に制限されているといえます。

2026年は診療報酬の改定の年。

報酬改定の行方はとても気になるところですが、一方でこの選定療養費についても提案や意見が募集され、その結果が公表されています。


▽議論のベースは10年前にさかのぼる
選定療養費に関する議論のベースは、当時のいわゆる「アベノミクス」で示された3本の矢(金融政策・財政政策・民間の成長)に絡む、日本再興戦略改訂2014のなかの、「戦略市場創造プラン/テーマ1国民の健康寿命の延伸/ⅲ保険給付対象範囲の整理・検討/最先端の医療技術・医薬品等への迅速なアクセス確保(帆円買い療養費制度の大幅拡充」にあります。

ここでは、先進的な医療へのアクセス向上のほか、療養時のアメニティの向上についても記載されており、定期的に選定療養として導入すべき事例を把握することなどが記されています。

出所:日本再興戦略改訂2014-未来への挑戦-
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon//kaigi/minutes/2014/0624/shiryo_02_1.pdf


▽提案・意見の例
<導入案>
具体的にどんな提案や意見がでているのか、いくつか例をあげると、
・執刀医を指名する料金(手術経験の豊富な医師に執刀してもらいたい患者は多い)
・ホスピタリティに対する選定療養費(職員の努力に対して、一定の水準を満たしてる場合)
・制限回数を超える受診に対する選定療養費(保険診療で受診できる回数を設けるべき)
・患者の都合からの医師の指名料(担当医師を指名したいという希望に応える目的から)
・緊急性が認められない場合の救急車搬送(救急搬送が必要でない症例も多い)

<部屋代廃止意見>
・医療はお金のあるなしに左右されず、誰もが安心してうけられるべき
・差額ベッドは、社会経済的格差が医療格差にならないよう配慮が必要だと思います
・お金のある、なしで個室が使える、使えないと差があるのは差別


<大病院の初再診廃止意見>
・(地方では)かかりつけ医が近くになく、大病院に受診せざるを得ない人もいます
・夜間に小児が時間外受診できる病院は大病院であり、自己負担を求められる場合がある
・地方の病院では選定療養により受診控えとなっている
・自由アクセスを制限する制度であり、不要です。

…などなど。

もっと内容を見たい方は、「選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果について(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001563501.pdf)」へアクセスしてみてください。


▽医療格差はやってくるのか
選定療養費は、ひらたくいえば「実費」の部分であり、保険ではカバーされない領域です。意見のなかにも「格差」という単語がでてきていますが、この「実費」であるということに、格差を危惧する方もいるのだと理解しています。

これまで、東南アジア圏の病院をいくつか見学したことがあります。多くの国で、公的医療機関の環境はおしなべて民間医療機関のそれと比べて、とくに環境面では劣るという状況にある現実をみてきました。

「公的保険でカバーできる部分は国の経済状況の反映を受ける。これを超える部分は金銭的手段によりグレードをアップすることができる」という事実は、海外では半ば当然のこととしてありました。

格差は小さいに越したことはありません。

より小さな格差で良いサービスを提供しようとするのであれば、あるいは受けようとするのであれば、高負担高福祉が理想なのかもしれませんが、私たちにはそれを受け入れる覚悟があるのでしょうか。

憲政史上初の女性首相の誕生が連日の報道を賑やかにしています。就任後の記者会見では「赤字に苦しむ病院、介護施設への対応として、診療報酬と介護報酬について、報酬改定の時期を待たずに、経営の改善、また働いている方々の処遇改善につながる補助金を前倒しして、措置する」と発言するなど、医療機関にとっては追い風の感もあります。

出所:高市内閣総理大臣記者会見
https://www.kantei.go.jp/jp/104/statement/2025/1021kaiken.html

補助金は有難い話ですが、しかしこればかりに頼っていては確かな競争力を磨いていくことはできないとも認識しています。私たち一人ひとりにも、いまをより良くしていくための頑張りが求められているのではないでしょうか。


執筆日:2025年10月23日

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