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診療(介護)報酬
2025年10月30日

新たな地域医療構想における必要病床数算定に向けた論点:「改革モデル」を織り込むか

執筆した医業経営コンサルタント

森田 仁計

森田 仁計

医療総研株式会社
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日本社会は2040年に向けて、85歳以上の人口が増加する一方、生産年齢人口が急激に減少するという、複合的な課題に直面しています。このような構造変化の中で、将来にわたり全ての地域・世代の患者が適切な医療・介護を受けられるよう、持続可能な医療提供体制の構築が喫緊の課題となっています。

この実現を目指し、国は現在、新たな地域医療構想の策定を進めており、その核心となるのが「必要病床数」の推計ロジックのアップデートです。これは、従来の基準病床数と必要病床数の関係が大きく変わり、医療計画の上位概念に位置づけられる新たな構想の実現に向けた道筋を示すものです。
本稿では、新しい地域医療構想における必要病床数推計の概要と、今後の議論で重要となる具体的な論点について紹介します。

――――――――――
I. 新たな地域医療構想における必要病床数推計の考え方(概要)
新たな地域医療構想は、2040年とその先を見据えた医療提供体制の構築を目的としています。必要病床数の推計についても、これまでの推計方法を基本としつつ、将来の医療需要の変化をより正確に反映させるための見直しが進められています。

1. 推計方法の継続性と定期的な見直し
必要病床数の推計は、これまでと同様に、診療報酬の出来高点数で換算した「医療資源投入量」の多寡によって医療機能を区分し、機能区分ごとに医療需要(1日当たりの入院患者延べ数)を算出し、病床稼働率で割り戻して病床数を推計する基本的な考え方を踏襲します。 ただし、入院医療の需要の状況が刻々と変わっていることを踏まえ、受療率の変化等を反映させ、定期的に(例えば将来推計人口の公表ごと、医療計画の作成ごと等)2040年の必要病床数の見直しを行うことが適当とされています。

2. 病床機能区分の変更:「包括期機能」の導入
今回の改定の大きな特徴の一つは、これまでの「回復期機能」について、その内容に「高齢者等の急性期患者への医療提供機能」を追加し、「包括期機能」として位置づけられた点です。 包括期機能は、高齢者の急性期患者に対し、治療と入院早期からのリハビリテーション等を実施し、早期の在宅復帰を目的とした「治し支える医療」を提供する機能として定義されており、2040年に向けた高齢者救急の受け皿としての役割が期待されています。

――――――――――
II. 必要病床数推計における主要論点:改革モデルと客観性の確保
必要病床数の推計にあたっては、単に過去の実績を将来に投影するのではなく、「目指すべき将来の姿」を具体的に反映させることが不可欠です。この「目指すべき姿」を織り込むのが「改革モデル」であり、これが推計ロジックの具体的な論点となります。

1. 受療率低下の組み込み(実績の反映)
現行の地域医療構想策定時、入院患者数は2025年まで増加すると推計されましたが、実際には地域医療構想の取り組み、医療技術の高度化・低侵襲化、在院日数短縮等の効率化により、入院受療率は低下傾向にあり、実際の入院患者数は推計よりも減少しています。 この現実を踏まえ、新たな推計では、医療技術の進歩や医療提供の効率化の取り組みによる受療率の低下を改革モデルとして組み込んで計算することが提案されています。また、コロナ前後の受療行動の変化など、いつ時点の数字を使うかについても考慮が必要です。

2. 包括期機能における効率化の推進
包括期機能(旧回復期)については、以下の効率化の視点を改革モデルとして組み込むことが検討されています。
• 高齢者救急の受け皿機能:包括期機能が、急性期機能の病床に代わって高齢者等の急性期患者を受け入れることによる効率化。
• リハビリテーション提供の効率化:回復期リハビリテーションの効率的な提供や、医療機関の連携・再編・集約化に向けた取り組みによる効率化。例えば、脳血管疾患の患者数は年々減少してきており、急性期を経過し、ADLの向上や在宅復帰を目的とした集中的なリハビリテーションを受ける患者数も減少することが見込まれるとしています。

3. 病床機能報告の客観性の確保
必要病床数の推計の基礎となるのは、医療機関からの病床機能報告です。しかし、これまでの報告制度では、特に急性期一般入院料1や地域包括ケア病棟について、都道府県や医療機関によって報告実態に大きなばらつきが見られました。 新たな構想では、地域での役割分担を明確にするため、医療機関の恣意的な報告を避け、客観性を有する報告とする必要があります。このため、今後は診療報酬における届出等に応じた客観性を有する報告を基本とし、機能区分ごとの目安をガイドラインで整理することが求められています。これにより、地域医療構想調整会議での議論の精度向上につながることが期待されます。

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おわりに
新たな必要病床数の推計ロジックは、単なる現状投影ではなく、将来の医療提供体制のあるべき姿(改革モデル)を織り込むことで、医療・介護連携、人材確保、そして地域医療の再編・集約化といった多岐にわたる課題への対応を促すものです。
2025年度に国でガイドラインが策定され、2026年度には都道府県で方向性や必要病床数の推計が検討される予定です。この過程において、地域の医療従事者や患者の視点も踏まえながら、改革モデルの具体的な設定や、客観的なデータに基づく議論が実効性を持って進められることが、2040年を見据えた持続可能な医療提供体制の実現に向けた鍵になるといえるでしょう。

出典:厚生労働省 第5回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会 資料1 より


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