病医院経営の今をお伝えするコラム
「現場は忙しい」理由を把握できていますか? 経営層と現場を繋ぐ「業務量調査」の効用
■ 「忙しい」の正体を、言葉にできますか?
日々の業務、本当にお疲れ様です。 どの病院でも、会議室やナースステーションで必ずと言っていいほど耳にする言葉があります。
「人が足りない」「現場が回らない」「とにかく忙しい」
皆、必死に現場を回しています。それは間違いありません。しかし、その「忙しい」は、具体的に「何に」時間を取られているから生じているのでしょうか?
「患者さんの対応が長引いているから」「書類作成が増えたから」──現場からはこうした声がよく上がりますが、これだけでは「具体的に何名を増員すべきか」「どこをシステム化すべきか」という経営判断には繋がりません。
現状の業務量(ファクト)が曖昧なまま、感覚だけで「業務改善」を進めても適切な業務改善とするのは至難の業に思えます。
これでは、経営層も現場スタッフも、お互いに徒労感を抱え、疲弊してしまいます。
■ 経営と現場、それぞれの「目線」のすれ違い
なぜ、経営層と現場の話はこうも噛み合わないのでしょうか。 それは、双方が見ている「景色」が根本的に異なるからと考えます。
経営層が見ているのは、病床稼働率や医業収益、人件費率といった「結果の数字」です。 一方で、現場が見ているのは、目の前の患者さんへのケアや、それに付随する膨大な事務作業という「診療行為におけるプロセスの苦労」です。
現場のスタッフが抱えている負担の中には、書類業務や突発的な患者対応等といった「数字」には表れないものが数多く存在します。
たとえば、予期せぬ患者対応にかかった30分。備品を探し回った10分。使いにくいシステムのために生じた二度手間。 これらは一つひとつは小さくても、積み重なっていけば現場としては大きい負担となります。
この現場の状況について可視化しないまま、トップダウンで「残業を減らそう」と号令をかけても、現場は「じゃあ仕事を減らしてくれ(あるいは人を増やしてくれ)」と反発が生まれ、現場と経営層での対立が生まれていくことがよく見られます。
■ データは「監視」ではなく「武器」にする
現場の負担を可視化する手段のひとつとして「業務量調査」があります。
業務量調査(タイムスタディ)の話をすると、現場からは拒否反応が出ることがあります。「監視されるのか」「サボっていないかチェックされるのか」等。
だからこそ、経営層やリーダーは業務量調査を実施する際は実施の目的を明確に伝えなければなりません。 調査を行うのは、無駄を削って人を減らすためだけではなく、現場の頑張りを経営層にも正しく伝わる「客観的な根拠」にするために行うのです。
「なんとなく大変だから人を増やしてほしい」 これでは、どんなに理解のある経営者でも、財務への責任がある以上、簡単に決裁印は押せません。
しかし、こう言われたらどうでしょうか。
「データを見ると、本来の専門業務以外の『書類業務』や『物品補充』に1日平均〇時間が割かれています。ここを分業化すれば、専門職が本来の業務に集中でき、残業コストも適正化できます」
ここまで解像度が高まれば、感情論ではなく、事実に基づいた建設的な議論が始まります。 業務量の可視化とは、現場と経営を揃える一つのツールに他なりません。
■ 次の一手を、確信を持って打つために
相次ぐ物価高騰に加え、2026年の改定に向け、医療機関を取り巻く経営環境は待ったなしの状況かと思われます。 限られたリソースをどこに配分するか。タスク・シフトか、DXへの投資か、それとも純粋な増員か。
その判断を少しでも精度の高いものにするためには、まず自分たちの足元である「現状」を、なるべく詳細な解像度で正しく知ることからしか始まりません。
とはいえ、日々の診療やケアに追われる中で、自院内で業務を細かく記録・集計・分析を完結させるのは、現実的にはかなりハードルが高いはずです。 院内のスタッフだけで完結させようとすれば、調査そのものが新たな「負担」となり、本来の業務を圧迫しかねません。
■ 「第三者の視点」を入れるという選択肢
もし、自院のリソースだけで取り組むのが難しいと感じたら、私たちのような外部の専門家を頼るのも一つの有効な手段です。
外部が入るメリットは、単なる集計作業の代行だけではなく、しがらみのない「中立的な視点」で、現場の実態をフラットに分析できることにあります。
「うちの現場の状況は実際のところ、どうなんだろう?」 もし少しでもそう思われたなら、まずは壁打ち相手として気軽にお声がけください。
病院システム
経営コンサルティング部
井之上晃弘
