病医院経営の今をお伝えするコラム
【R8診療報酬改定】看護・多職種協働加算において、加算対象となる急性期一般4と急性期病院Bの選択の考え方
今回の令和8年度診療報酬改定で「看護・多職種協働加算」が新設されました。これは 急性期一般入院料4と急性期病院Bが対象とされた加算であり、コメディカルが病棟の配置要件となるこれまでの診療報酬からの大きな転換点となります。
今回は、この看護・多職種協働加算の取得する際の、急性期病院Bとするかそれとも急性期一般4を選択するかその是非について解説します。
今回の改定では「急性期病院B」という新たな評価区分が誕生しました 。 これは、救急搬送件数や手術件数といった実績を求める一方で、地域における急性期医療の拠点として機能する病院を構造的に優遇するものです 。
これに組み合わさるのが「看護・多職種協働加算」です 。 生産年齢人口の減少に伴い、看護職員の確保は限界を迎えています。 そこで、理学療法士や管理栄養士などのコメディカル職を病棟に配置し、専門性を発揮しながら看護職員と協働する体制による病院運営を試みています 。 「看護師が集まらないなら、他職種で病棟を回す仕組みをろう」というメッセージであると筆者は解釈しています。
■ 【詳細解説】看護・多職種協働加算とは何か
以下が新設された「看護・多職種協働加算」の中身です。 この加算は、対象となる入院料によって点数が異なります 。
・ 看護・多職種協働加算1:277点(対象:急性期一般入院料4)
・ 看護・多職種協働加算2:255点(対象:急性期病院B一般入院料)
主な施設基準は以下の通りです。
・ 人員配置:病棟において、患者に指導や診療の補助を行う看護職員及び他の医療職種の数が、常時25対1以上であること 。
・ 対象職種:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、臨床検査技師のいずれか 。
・ 実績要件:急性期一般入院料1と同等の基準を満たすこと 。 具体的には、重症度、医療・看護必要度Ⅰの特に高い基準を満たす割合が2割8分以上、かつ、一定程度高い基準を満たす患者の割合に係る指数が3割5分以上の病棟である、平均在院日数16日以内、自宅等への退院割合が8割以上等、といったハードルが課されます 。
しかし、リハビリ専門職を病棟に専従・専任で配置するということは、彼らが外来や他病棟で稼ぎ出していた「疾患別リハビリテーションの単位数」を取得できなくなります。
「通常の疾患別リハビリによる期待収益 VS この加算による増収効果」
経営面においてはこの2つについての収支シミュレーションを行い、採算性を分析する必要があります。
■ なぜ「急性期一般4」も加算の対象となったのか
急性期一般入院料4の点数は1,597点です 。 ここに「看護・多職種協働加算1(277点)」を上乗せすると、合計は1,874点となります 。 これは、急性期一般入院料1の点数と全く同じ額です 。
国が急性期一般4にこの加算を用意した意図としては「看護師の7対1配置(急性期一般1)は維持できないが、重症患者の受け入れ機能は急性期一般1と同等レベルを維持している病院」に対する救済措置ということが考えられます。
看護師不足でやむなく10対1配置に落としたとしても、他職種でカバーし、重症度や在院日数の実績を維持できるのであれば、急性期一般1と同じ点数を保証する。
これが、急性期一般4でも加算が取得できる理由だと考えられます。
■ 急性期病院Bと急性期一般4、どちらを選ぶべきか
では、急性期Bと急性期一般4ではあまり点数差がないですが、どちらも医療機関だった場合、急性期病院Bと急性期一般4、どちらを選択すべきでしょうか。
DPC病院としての持続的な経営基盤の維持・強化を考慮すると、結論は「急性期病院Bへ移行する方が優位性が高い」と言えます。
前提として、どちらを選択しても、クリアすべき「看護重症度のハードル」は急性期一般1と同等であり、現場の負担は変わりません 。 その上で両者を比較します。
【急性期病院B + 協働加算】
・ 収益性:1,643点 + 255点 = 1,898点となり、急性期一般4ルートよりも点数が高くなります 。
・ 将来性:条件を満たせば「急性期総合体制加算」の取得も視野に入り、次の改定でDPC標準群1に分類される可能性が高まります。
【急性期一般4 + 協働加算】
・ 収益性:1,597点 + 277点 = 1,874点。現場の負担(重症度要件等)は急性期病院Bと同等であるにもかかわらず、収益は劣ります 。
・ 将来性:次期改定でDPC標準群2に分類されるリスクがあり、将来的には基礎係数の差でさらに減収となる恐れがあります。
同じ現場負担を負うのであれば、構造的に優遇される「急性期病院B(+協働加算)」の取得を優先すべきです。
「急性期一般4(+協働加算)」は、どうしても救急搬送件数などの急性期Bの実績要件を満たせない場合の「次善の策」と位置付けるのが、経営的な正解と考えます。
■ 次のステップへ向けて
「今後リハビリ技師は介護士のような役割をしないといけないかもしれない」という話は私が約3年前に現場に理学療法士として従事していた時や資格取得前の大学の講義等でもささやかれておりましたが、今回の診療報酬改定で現実に近いものとなりました。
病棟運営において多職種協働を行うことは、リハビリ技師にとっては不満に思う人少なくないと思われますが、リハビリ技師は動作分析・動作介助のプロです。彼らが看護師の補助者として対応することは大いに看護師の負担軽減になることや患者目線でも安心してトイレ等の生活動作ができるようになるなど、経営面だけでなく現場目線でもプラスとなる可能性もあります。
まずは自院の病棟ごとの期待収益と、職種間のタスクシフトの実効性を数字で可視化することから始めてください。
もし、院内でのシミュレーションや機能転換の判断に迷いが生じた場合は、外部の視点を入れる壁打ち相手として、いつでも弊社にご相談ください。

