病医院経営の今をお伝えするコラム
令和8年度診療報酬改定を踏まえ、病院事務長から管理栄養士に求めるものは
『「栄養は“コスト”か、“戦略”か」―診療報酬改定の先にあるもの―』
病院経営において、「栄養」は長らく“コスト”として扱われてきた側面がある。食材費、人件費、調理体制――いずれも経費として見られやすく、収益との直接的な結びつきが見えにくい領域だった。
しかし、その見方は確実に変わりつつある。
令和8年度診療報酬改定を見据えたとき、私たち病院事務長が感じているのは、「栄養はもはや戦略そのものである」という現実だ。なぜなら、患者のアウトカムに直結し、在院日数や再入院率、さらには医療の質評価にまで影響する重要なファクターとなっているからである。
『患者は“点”ではなく“線”で診る時代』
近年、「患者ジャーニー」という言葉が医療の現場でも使われるようになった。患者が病気を認識し、受診し、治療を受け、回復し、再び地域で生活するまでの一連の流れ――いわば“患者の旅”である。
この視点に立つと、栄養の役割は一気に広がる。
入院中だけ適切な食事を提供すればよい、という時代ではない。外来、在宅、介護との連携を含め、患者の生活全体の中で栄養をどう支えるかが問われている。
つまり、管理栄養士は「病院の中の専門職」から、「地域をつなぐキーパーソン」へと進化する必要があるのだ。
『診療報酬改定が示す“メッセージ”』
診療報酬改定は単なる点数の増減ではない。そこには必ず国からのメッセージが込められている。
今回の流れから読み取れるのは明確だ。
・栄養管理は“全患者に対して当たり前に行うもの”
・多職種連携の中で“結果を出すこと”が求められる
・加算は“取ること”ではなく“機能しているか”が問われる
つまり、「やっているつもり」では評価されない時代に入ったということだ。
『事務長の視点から見た“期待”』
では、病院事務長は管理栄養士に何を求めているのか。
それは決して難しいことではないが、本質的な問いである。
「その介入で、何が変わったのか?」
体重が増えたのか、ADLが改善したのか、在院日数が短縮したのか。数字でも、エピソードでもいい。現場で起きた変化を“言語化”し、“可視化”する力が求められている。
さらに言えば、それを院内外に発信できる力だ。
良い取り組みがあっても、伝わらなければ存在しないのと同じである。
『これからの管理栄養士に必要なもの』
これからの時代、求められる管理栄養士像は明確だ。
単に栄養の専門知識を持つだけでは足りない。
・臨床を理解する力
・多職種と対話する力
・データで語る力
・そして、変化を起こす力
この4つが揃ったとき、管理栄養士は“コストセンター”から“バリューセンター”へと変わる。
『最後に』
医療は今、大きな転換点にある。
人口減少、医療資源の制約、地域包括ケアの深化――こうした環境の中で、病院は「選ばれる存在」でなければならない。
その鍵の一つが、実は「栄養」なのではないか。
患者にとって最も身近で、最も継続性のある医療。それが食であり、栄養である。
だからこそ、今こそ問い直したい。
「栄養はコストか、それとも戦略か」
答えは、現場にある。
そして、その答えを形にするのは、他でもない管理栄養士自身である。

