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採用・人事労務
2026年07月23日

管理職を頑張らせ過ぎていませんか ~リーダーが壊れる前に見直したい仕事の分担~

執筆した医業経営コンサルタント

市澤 武晴

市澤 武晴

株式会社Lifehack
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1.はじめに

医療機関では、責任感が強く、周囲から信頼されている職員がリーダーに選ばれることが少なくありません。
しかし、真面目で責任感の強い人ほど、部下の問題、勤務調整、院長との連絡、患者対応まで自分で抱え込みます。
院長から見ると、よく働き、弱音を吐かないため、「任せておけば大丈夫」と感じます。

ところが、本人の中では負担が積み重なっています。
管理職が突然休職したり、退職を申し出たりして、初めて深刻さに気づく医療機関もあります。

今回は、看護師リーダーの事例を通じて、管理職を育てるうえで必要な仕事の分担について考えます。


2.責任感の強い看護師リーダー

ある診療所では、経験が長く、周囲への気配りができる看護師をリーダーに任命しました。
本人は期待に応えようと、看護業務に加えて、新人指導、勤務の調整、職員間のトラブル対応、院長への報告などを引き受けました。
欠勤者が出れば自分が業務を補い、指導が不十分な職員がいれば、勤務後に資料を作成しました。
部下から不満を聞けば自分で解決しようとし、院長には「大丈夫です」と報告していました。

院長も、問題なく現場が回っていると考えていました。

ところが、次第に本人の表情が暗くなり、判断に時間がかかるようになりました。小さなミスを強く気にし、職員の相談にも余裕を持って対応できなくなりました。
それでも本人は、「自分がやらなければ現場が回らない」と考え、仕事を手放しませんでした。

この状態は、本人の責任感の問題だけではありません。医院が、リーダー個人の頑張りに依存していたのです。


3.管理職に仕事が集中する3つの原因

管理職が抱え込む職場には、共通する原因があります。

1つ目は、管理職の役割が決まっていないことです。
リーダーという肩書だけを与え、「現場をまとめてほしい」と任せると、本人はどこまで責任を負うべきか判断できません。
その結果、職員の欠勤、教育、苦情、人間関係など、目の前にある問題をすべて自分の仕事だと考えます。

2つ目は、院長への報告基準が曖昧なことです。
どの問題をリーダーが解決し、どの段階で院長に相談するのかが決まっていなければ、責任感の強い人ほど「これくらいは自分で処理しなければ」と抱え込みます。

3つ目は、仕事を任せる相手がいないことです。
部下が育っていない職場では、リーダーが自ら現場業務をこなしながら管理も行います。
これは管理職育成ではありません。単に、仕事のできる職員へ負担を上乗せしているだけです。


4.「本人の能力不足」で片付けてはいけない

管理職が疲弊すると、「もっと人に任せればよい」「管理職なのだから調整してほしい」と本人に求めがちです。
しかし、任せられる人を育てず、役割も決めず、相談の基準も示していない状態で、本人だけに改善を求めるのは無理があります。
特に小規模な医療機関では、院長と管理職の距離が近いため、正式な決まりがなくても仕事が進みます。

その一方で、問題が起こるたびに管理職へ仕事が集まり、本人にしか分からない業務が増えていきます。
この状態を放置すると、管理職が不在になった途端に現場が止まります。

つまり、管理職の疲弊は個人の問題ではなく、組織の弱さが表面化したものです。


5.管理職育成は「仕事を増やすこと」ではない

管理職育成というと、研修を受けさせたり、新しい役割を与えたりすることが中心になりがちです。
しかし、本当に必要なのは、何を任せ、何を任せないかを明確にすることです。

例えば、看護師リーダーの役割を次のように整理します。
日常の業務調整や新人への声掛けはリーダーが行う。一方で、休職や退職に関する相談、重大な職員間の対立、患者安全に関わる問題は院長や事務長が対応する。
このように分けることで、リーダーはすべての問題を自分で解決する必要がなくなります。

また、定期的に院長や事務長と話す時間を設けることも重要です。
問題が起きたときだけ報告を求めるのではなく、週1回、あるいは月2回でも、職員の状況や業務上の困り事を共有します。

管理職が困ってから相談するのではなく、困り始めた段階で組織が気づける仕組みが必要です。


6.管理職自身の仕事も減らす

リーダーに管理を任せるのであれば、現場業務の一部を減らさなければなりません。
通常業務を他の職員と同じ量だけ担当しながら、管理業務も行わせれば、必ずどこかに無理が生じます。

例えば、勤務表の作成、新人指導、院内会議の準備を任せるのであれば、その時間を勤務時間内に確保します。
「空いた時間にやってほしい」「現場が落ち着いたら取り組んでほしい」という指示では、管理業務は勤務後や休憩時間に回されます。

管理職に時間を与えないまま成果だけを求めることは、育成ではなく消耗です。


7.部下を育てることも仕事の分担である

管理職が抱え込む最大の理由は、「他の職員に任せると不安だから」です。
実際、管理職本人が行った方が早く、正確なこともあります。

しかし、管理職がすべて処理し続ければ、部下はいつまでも育ちません。
最初から一つの仕事をすべて任せる必要はありません。
物品管理、研修資料の準備、新人への基本的な説明など、範囲を限定して任せます。
管理職は、仕事を代わりに行うのではなく、任せた結果を確認し、必要な助言をする役割へ移る必要があります。

管理職育成とは、管理職本人を鍛えるだけではありません。管理職の下で仕事を引き受けられる職員を増やすことでもあります。


8.院長が確認すべき兆候

管理職は、限界になるまで「できません」と言わないことがあります。

院長は、本人の申告を待つのではなく、変化を見なければなりません。

残業が増えている、休憩を取らなくなった、仕事を他人に任せなくなった、表情が暗い、小さなミスに過度に反応する、部下への言い方が強くなった。

こうした変化は、本人の性格が変わったのではなく、負担が限界に近づいている可能性があります。

この段階で「リーダーなのだから頑張ってほしい」と励ますことは逆効果です。

必要なのは、仕事を洗い出し、誰が担うべきかを見直すことです。

### 9.まとめ

管理職が壊れる職場では、本人の責任感に組織が依存しています。

仕事を抱え込む管理職に対し、「もっと人に任せてほしい」と伝えるだけでは解決しません。

役割の範囲、院長への報告基準、管理業務を行う時間、部下へ任せる仕事を組織として決める必要があります。

管理職育成とは、責任を増やして我慢させることではありません。

本人が判断すべきことと、院長が引き取るべきことを分け、周囲に仕事を任せられる状態をつくることです。

院長先生には、管理職が問題なく働いているように見えるときこそ、考えていただきたいと思います。

「この職場は、管理職の能力で回っているのでしょうか。それとも、管理職の無理によって回っているのでしょうか。」

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