病医院経営の今をお伝えするコラム
「まずは見学へ」で学生は動くのか ~院長が知っておきたい採用導線のギャップ~
1.「気軽な見学」に潜む心理的な負担
就職説明会で「興味があれば、まずは気軽に見学へ」と案内しても、申込みがほとんど入らないことがあります。
医院側は、選考ではないため気軽に参加できると考えます。しかし、学生は次のように受け止めている可能性があります。
・見学したら応募を期待されるのではないか
・見学後に断ると気まずいのではないか
・一人で訪問して何を話せばよいのか
「まず見学を」という案内だけでは、内容や参加後の扱いが分かりません。そのため、少し興味があっても、不安が上回り、申込みに至らないことがあります。
学生に必要なのは、単なる気軽さではなく、参加する理由と、安心して断れることが分かる案内です。
2.なぜ意欲の高い学生はインターンを選ぶのか
一方、見学より拘束時間の長いインターンには、積極的な学生から応募が入ることがあります。
その理由は、仕事を体験できる、現場で学べる、自分に合う職場か確認できる、手当が支給されるなど、参加する意味が明確だからです。
医院側は、見学を軽い入口、インターンを重い入口と考えます。
しかし学生側から見ると、見学は応募に近い行動であり、インターンは学びや体験を目的に参加できる機会と受け取られる場合があります。
学生を動かすのは、参加時間の短さではありません。そこで何を得られるかが、具体的に分かることです。
3.学生の検討段階に合わせて入口を分ける
説明会に参加する学生の志望度は同じではありません。全員を一律に見学へ誘導するのではなく、段階に応じた入口を用意します。
・まず雰囲気を知りたい学生
30分の院内見学と先輩職員との座談会
・仕事内容を詳しく知りたい学生
半日の仕事体験と業務説明
・就職先として具体的に検討したい学生
実際の現場を経験するインターン
名称も「医院見学」だけではなく、「働き方見学会」「先輩スタッフとの院内ツアー」など、内容が分かるものにします。
ただし、気軽な見学と案内しながら、当日に応募意思を確認してはいけません。参加後に応募しなくても差し支えないことまで、事前に伝える必要があります。
4.説明会終了前に次の行動を選べるようにする
説明会が終わり、学生が日常生活へ戻れば、医院への関心は次第に薄れます。
「後からホームページを見て申し込んでください」という案内だけでは、行動につながりにくくなります。
見学日を複数提示し、説明会終了前に二次元コードから仮申込ができるようにします。友人との参加を認めることも、申込みの不安を下げる方法です。
大切なのは、学生にその場で応募を迫ることではありません。興味を持った時点で、負担なく次の行動を選べる状態をつくることです。
5.どの段階で学生が離れているかを見る
採用活動では、見学者数だけを見ても原因は分かりません。
説明会から見学につながらないのであれば、見学の内容や申込方法に問題がある可能性があります。
見学には来るものの応募につながらないのであれば、見学当日の説明、職場の雰囲気、職員との接し方を見直す必要があります。
一方、インターンから応募につながっているのであれば、学生が求めているのは見学ではなく、具体的な仕事体験なのかもしれません。
「最近の学生は消極的だ」と片付ける前に、説明会、見学、体験、応募のどの段階で学生が離れているかを確認することが必要です。
6.まとめ
医院側にとって気軽な見学が、学生にとっても気軽とは限りません。
学生が知りたいのは、所要時間、何が見られるのか、誰と話すのか、参加後に応募を求められるのかという具体的な情報です。
就職説明会の目的は、医院を上手に紹介することではありません。学生が自分に合った次の行動を選べる状態をつくることです。
「最近の学生は消極的だ」と片付ける前に、自院の採用導線を学生の立場から見直してみてください。
見学を勧めることと、学生が見学を選べる状態をつくることは、同じではありません。

